01まず知りたいことに答えます|早見表

細かい説明の前に、よく聞かれることの結論をまとめます。
いずれも詳しくは本文で扱います。

知りたいこと 基本の考え方 実務上の対応
家庭訪問はどのくらい来る? 定期訪問は少なくとも年2回以上が国の実施要領の基準 世帯の状況によって増減します。担当に年間の予定を聞けます
訪問は断れる? 正当な理由なく拒み続けるのは避けたい 都合が悪い日は日程調整を依頼できます
何を報告すればいい? 収入・世帯・住居・健康などの変化(法第61条) 分かった時点で早めに連絡します
担当は何世帯みている? 市の福祉事務所ではおおむね80世帯に1人という配置標準 すぐ連絡がつかないこともあります。急ぎはその旨を伝えます
引っ越したいときは? 探す前に相談するのが基本 家賃の上限・初期費用・転居の理由を確認します
指示に納得できないときは? 内容と根拠を確認してよい 口頭で終わらせず記録に残します

02家庭訪問はどのくらいの頻度で行われるか

通常の居宅世帯への家庭訪問は、少なくとも年2回以上が基本です。
世帯の状況に応じて回数が増えます。
一方、日常の生活状況が施設管理者等から報告されるグループホーム等では年1回以上とする取扱いなどがあります。

  • 生活が安定している高齢者世帯・障がいのある方の世帯 — 年2回程度にとどまることがあります
  • 保護が始まったばかりの世帯、就労支援を受けている世帯 — 毎月など、回数が多くなることがあります

訪問が多いことは「疑われている」という意味ではなく、支援の必要度に応じた運用です。
年間の見込みを知りたい場合は、担当のケースワーカーに直接聞いて構いません。

(根拠: 厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」〈昭和38年4月1日社発第246号〉の訪問調査に関する定め。
確認日: 2026年8月31日。
回数の格付けは各福祉事務所が定めます)

03事前連絡はあるのか、断ることはできるのか

定期の家庭訪問は、事前に日程を調整したうえで行われるのが一般的です。
ただし事前連絡が法律で義務づけられているわけではないため、連絡なしの訪問がまったくないとは言えません。

訪問そのものについては、正当な理由なく拒み続けることは避けてください。
生活保護法第28条は、実施機関が必要と認めるときに職員が居住の場所に立ち入って調査できると定めており、家庭訪問はこの調査の一環として位置づけられています。

通院や仕事などで都合がつかない場合は、理由を伝えて日程調整を相談してください。
必要な調査を拒み続けると、保護の決定や継続に影響することがあります。
不在着信や連絡票に気づいたら、早めに担当へ連絡しましょう。

04相談してよいこと・したほうがよいこと

「こんなことを相談していいのか」と迷う方が多いのですが、生活の立て直しに関わることは基本的に相談の対象です。
実際に相談が持ち込まれる場面を挙げます。

  • 住まい — 引っ越したい、家賃が上限を超えている、更新料の通知が来た、住まいの設備が壊れた
  • お金 — 生活費が足りない、臨時の出費がある、収入が増えた
  • 仕事 — 働きたい、体調が悪くて働けない、資格を取りたい
  • 医療・介護 — 病院にかかりたい、入院が必要になった、介護が必要になった
  • 家族 — 同居する人が増えた・減った、子どもの進学

とくに住まいとお金は、動く前に相談したほうが結果的に早く進みます。
転居してから相談すると、初期費用が支給の対象にならないことがあるためです。

05ケースワーカーは何をする人か(役割を知ると相談しやすくなります)

ケースワーカーに、何をどこまで話せばいいのか。
訪問と聞くと身構えてしまうのはなぜか。

やり取りに緊張や苦手意識を持っている方は少なくありません。

まず押さえておきたいのは、ケースワーカーの仕事が条文でどう定められているかです。

生活保護法第27条第1項は、次のように定めています。

保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

「生活の維持、向上」のための指導・指示。
つまり役割は、生活を立て直す方向へ支援することにあります。

そのうえで、この権限には条文上の限度が付いています。
次で見ていきます。

06指導・指示には、条文上の限度があります

指導・指示に条文上の限度があることを示す図解

結論から言うと、指導・指示は無制限ではありません。

第27条は、続く第2項・第3項でこう定めています。

前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

「自由を尊重」「必要の最少限度」「意に反して強制し得るものと解釈してはならない」。
この3つが条文に明記されています。

納得できない指導・指示を受けたと感じたときは、内容と理由を確認してください。
条文が「自由を尊重」「意に反して強制し得るものと解釈してはならない」と定めている以上、何のための指導なのかを聞くことは、条文の趣旨に沿った行動です。

07家庭訪問は、条文に根拠のある調査です

訪問時の身分証確認を示す図解

家庭訪問には、条文上の根拠があります。
第28条第1項です。

保護の実施機関は、…必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、…報告を求め、若しくは当該職員に、当該要保護者の居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ…ることができる。

条文上の調査の対象は、資産・収入の状況、健康状態などです。

あわせて知っておきたいのが、同条第3項です。

第一項の規定によつて立入調査を行う当該職員は、…その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

訪問する職員には、身分証の携帯と、求められたときの提示が義務づけられています。
不審に感じたら、身分証の提示を求めてください。
これは条文が認めている確認です。

08変化の届出と定期的な収入申告が必要です

変化があったときに届け出ることを示す図解

こちらから動く義務もあります。
第61条です。

被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

対象は「変化があったとき」です。
収入が増えた・減った、引っ越した、世帯の人数が変わった。
こうした変化は、聞かれる前に自分から届け出ることになっています。

収入・住居・世帯構成などに変化があれば速やかに届け出ます。
また、受給中は定期的な収入申告が必要です。
変化がない月や収入がない月の提出方法も、担当の案内を確認してください。

09部屋探しでは、福祉事務所と不動産会社の役割を分けて確認します

部屋探しでの役割分担を示す図解

転居や部屋探しの場面で、ケースワーカーがどこまで関わるのか。
ここは実務の話になります。

サポルムが仲介する場合は、大家・管理会社への代理納付や住宅扶助の制度説明、書類の連携をお手伝いします。
保護の認定・支給や代理納付の手続きは福祉事務所が担うため、案件ごとに必要な連絡と役割分担を確認します。

ケースワーカーに相談すべきなのは、その前の段階です。
転居してよいか、家賃の上限はいくらか、何が支給の対象になるか。
ここは物件を探し始める前に確認しておくと、あとで必要になる調整を減らしやすくなります。

10「自治体によって違う」からこそ、確認の仕方が大事です

自治体ごとに確認することを示す図解

最後に、確認の仕方の話です。

当社の実務では、次のような論点は自治体によって運用・判断が割れることが確認されています。

  • 前払いする家賃の対象月・契約開始日・支払日と支給の扱い
  • 引越し費用の扱い
  • 鍵交換費用の扱い
  • 特別基準の扱い
  • 初期費用の上限
  • 必要書類

実例を2つ挙げます。
前家賃について、当社が横浜市で仲介した契約では、支給が認められない運用でした。
同じ神奈川県内でも自治体ごとに判断が分かれます。

東京23区など都内の1級地では、単身の通常の家賃上限は53,700円です。
当社が港区・中央区で受けた69,800円との案内は、2026年8月の個別確認に基づくもので、東京都全域や全ての世帯へ自動的に当てはまるものではありません。

ただし、ここで挙げた2つはいずれも当社が2026年8月時点で確認した個別の案内・実務です。
同じ自治体でも時期や個々のケースによって扱いが変わることがあり、将来にわたる運用や、その自治体の全件を保証するものではありません。
ご自身のケースは必ず担当のケースワーカーにご確認ください。

だからこそ、ネットの情報や他の自治体の話をそのまま当てはめず、ご自身の自治体の扱いを担当のケースワーカーに個別に確認することが大事です。

転居を考え始めたら、転居の理由や家賃・初期費用の上限を確認したうえで、次の3つも聞いておきましょう。

  • 「前家賃は出ますか」
  • 「引越し費用はどこまで出ますか」
  • 「必要な書類は何ですか」

具体的に聞くほど、具体的な答えが返ってきます。

11口頭だけで進めず、記録を残しておくと安心です

やり取りを記録に残しておくと、後から「言った・言わない」で困ることがなくなります。
難しいことをする必要はありません。

  • 相談した日付と、担当者から言われた内容を手帳やスマホにメモしておく
  • 提出した書類は、コピーか写真を残しておく
  • 家賃の支払い記録(振込明細・通帳)を保管しておく

説明や対応に納得できない場合は、まず担当者の上司や福祉事務所の相談窓口へ相談してください。
保護の決定などの処分に不服がある場合は、通知書に記載された審査請求先・期限を確認します。

住まい探しの側の準備は、ケースワーカーへの確認事項の整理から一緒に進めることも可能です。