01「バレる」の答えは、相手によって変わります
「生活保護を利用していることが、まわりに知られてしまうのではないか」。
この不安をひとまとめに「バレるかどうか」で考えると、答えが出ません。
相手によって、法律の定めがまったく違うからです。
相手別の結論を先にまとめます。
| 相手 | 役所から知らされる? | 補足 |
|---|---|---|
| 近所・知人 | 無関係に受給情報を知らせることはありません | 職員が職務上知り得た秘密を漏らすことは法律で禁じられています |
| 会社・職場 | 必要に応じて雇主への照会が行われます | ただし調査で必要と認められる場合、雇主への照会が行われることがあります(後述) |
| 家族・親族 | 連絡が行く可能性があります | 扶養照会。扶養が期待できない親族などには照会を行わない取扱いがあります(後述) |
| 大家・管理会社 | 調査や代理納付などに必要な連絡が行われる場合があります | 住宅扶助や代理納付の手続きに必要な情報を共有します。制度の説明は仲介会社にも相談できます |
福祉事務所が受給情報を周囲に無関係に知らせることはありません。
ただし、保護の決定・実施に必要な調査や、代理納付などの手続きで、勤務先や家主等へ連絡する場合があります。
守秘義務があることと、必要な照会・連携が一切行われないことは別です。
02福祉事務所は、官公署・銀行・雇主に照会できます

結論から言うと、収入や預貯金は本人の申告だけで完結しません。
まず、福祉事務所が何を調べられるのかです。
生活保護法第29条第1項は、次のように定めています。
保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定の施行のために必要があると認めるときは、次の各号に掲げる者の当該各号に定める事項につき、官公署、日本年金機構若しくは国民年金法…第三条第二項に規定する共済組合等…に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社、次の各号に掲げる者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
条文に出てくる相手を並べると、官公署、日本年金機構、共済組合等、銀行、信託会社、雇主、その他の関係人です。
つまり、収入や預貯金の状況は、本人の申告だけで完結するものではありません。
銀行への照会も、勤務先への照会も、条文上の根拠があります。
ここを「調べられない」と説明している情報を見かけることがありますが、条文はそうなっていません。
なお、この権限には「保護の決定若しくは実施…のために必要があると認めるとき」という限定が付いています。
無条件に何でも調べられる、という書き方にはなっていません。
03調べた内容を外部に漏らすことは、法律で禁じられています

調べた内容を外に漏らすことは、法律で禁じられています。
次に、調べた内容がどう扱われるかです。
福祉事務所の職員は地方公務員です。
地方公務員法第34条第1項は、次のように定めています。
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
その職を退いた後も、また、同様とする。
「その職を退いた後も」と書かれている点が、この条文の特徴です。
退職後も義務が続きます。
福祉事務所の職員には、地方公務員法第34条に基づく守秘義務があります。
退職後もこの義務は続きます。
生活保護法にも委託事業等の従事者に関する守秘義務と罰則がありますが、対象となる立場は条文ごとに異なります。
第二十七条の三第六項、第五十五条の七第三項…及び第五十五条の九第四項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
職員には守秘義務があり、受給情報を無関係に周囲へ知らせることはできません。
一方、保護の決定・実施に必要な調査や手続きで関係先へ連絡する場合はあります。
誰かへの連絡が心配なときは、相手と事情を福祉事務所へ具体的に伝えてください。
不安の中身を、法律が禁じていることと、そうでないことに分けておくと、心配すべき範囲がはっきりします。
04変化は届け出ます。不正受給では徴収・加算の場合があります

調べられるか以前に、自分から届け出る義務があります。
ここまでは「調べられる側」の話でしたが、利用する側にも義務があります。
生活保護法第61条は、次のように定めています。
被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。
収入が増えたとき、引っ越したとき、世帯の人数が変わったとき。
これらは自分から届け出ることになっています。
では、届け出なかった場合はどうなるのか。
第78条第1項が対象としているのは、「不実の申請その他不正な手段」により保護を受けた場合です。
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。
受け取った分を返すだけでなく、その40%を上限とする金額が上乗せされうる、という規定です。
ただし、この加算が届出漏れのすべてに当然に付くとは条文に書かれていません。
対象は「不実の申請その他不正な手段」による場合です。
なお、届出に必要な書類や、引越し費用の見積の取り方といった運用は、自治体によって異なることが当社の実務でも確認されています。
手続きの具体については、管轄の福祉事務所に確認するのが確実です。
05扶養照会を行わない場合があります

扶養義務者がいれば必ず通知される、という条文にはなっていません。
扶養照会では、親族から援助を受けられる可能性を調べます。
国は、扶養義務の履行が期待できない親族について照会を行わない取扱いを示しています。
DV・虐待や著しい関係不良などの事情を窓口へ伝えてください。
生活保護法第24条第8項の保護開始前の通知は、一般の扶養照会とは別の手続きです。
生活保護法第24条第8項は、次のように定めています。
保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。
ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
条文の構造として、前半で通知の義務を定め、後半のただし書きで例外を置いています。
「あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない」の部分です。
つまり、扶養義務者がいれば必ず通知される、という書き方にはなっていません。
また、申請そのものについて、厚生労働省は次のように説明しています。
扶養義務者の扶養は保護に優先しますが、例えば、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません。
親族に連絡されると困る事情は、扶養照会の前に福祉事務所へ具体的に伝えてください。
一般の扶養照会の扱いと、第24条第8項の通知の扱いは分けて確認します。
06部屋を借りるときは、制度の説明と役割分担を確認します

最後に、部屋を借りる場面です。
生活保護を利用している方の住まい探しについて、サポルムでも相談を受けています。
住宅扶助や代理納付の手続きでは、必要に応じて大家・管理会社へ制度や支払いの方法を説明し、情報を共有します。
サポルムが仲介する場合は、大家・管理会社への制度説明や書類の連携をお手伝いします。
保護の認定・支給や代理納付の手続きは福祉事務所が担うため、必要な連絡や役割分担を案件ごとに確認します。
相談先と確認する事項を、次のように整理できます。
| 場面 | 相談先・確認事項 |
|---|---|
| 大家・管理会社への代理納付・住宅扶助の説明 | 仲介会社(当社) |
| 保護の認定・支給、代理納付の手続き | 福祉事務所。必要な連絡や書類を確認する |
| 必要書類・見積の取り方の確認 | 自治体により運用が異なるため、契約前に確認 |
これは、不動産会社によって対応が変わる部分だということでもあります。
制度の説明に慣れている会社とそうでない会社では、話の運び方が変わります。
「知られるかどうか」ではなく、「誰が、どう説明するか」の問題として捉えたほうが、実際には前に進みます。
07不安な点は、確認してから動くほうが早く進みます

ここまでを整理すると、次のようになります。
- 福祉事務所は、官公署・銀行・雇主などへ照会できる(第29条第1項)
- 職員には守秘義務があり、退職後も続く(地方公務員法第34条第1項)
- 収入や住まいの変動は、自分から届け出る義務がある(第61条)
- 不実の申請など不正な手段による受給では、費用徴収に加えて徴収額の40%を上限とする加算がありうる(第78条第1項)
- 扶養が期待できない親族などには扶養照会を行わない取扱いがある。第24条第8項の事前通知は別の手続き
- 大家・管理会社への制度説明は仲介会社にも相談できる。福祉事務所との役割分担を確認する
必要書類や見積の取り方といった運用は、自治体によって異なります。
心配な点があるときは、管轄の福祉事務所に確認してください。
住まい探しの部分については、当社でも相談を受けています。
制度の説明を含めて、どう進めるかからお話しできます。


