01生活保護とは|収入が最低生活費に足りない分を補う制度です

制度の全体像を示す図解

生活保護という言葉は知っていても、中身までは知らないという方が多いのではないでしょうか。

制度を一文で言うと、収入が国の定める最低生活費に足りないときに、その差額を補う仕組みです。
厚生労働省は「収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます」と説明しています。

支給されるのは生活費だけではありません。
住まい、医療、介護など8つの扶助があり、必要なものだけを受ける形もあります。

この記事では、次のことを生活保護法の条文と厚生労働省の公表資料に沿って確認していきます。

  • 何のための制度で、どんな原理に基づいているのか
  • 誰が受けられるのか。「あらゆるものを活用する」とは何をすることか
  • いくら支給され、それはどう決まるのか
  • 何が支給されるのか(8つの扶助)
  • どこへ相談すればいいのか

なお、当社は生活保護を利用される方の住まい探しを仲介している不動産会社です。
ご相談では「生活保護でも部屋を借りられるのか」という質問を多くいただきます。
住まいのことは記事の後半で、実務の立場からお伝えします。

02制度の目的と、4つの基本原理

4つの基本原理を示す図解

生活保護法の第1条は、制度の目的をこう定めています。

この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

読み取れるのは2つの目的です。
最低限度の生活を保障することと、自立を助長すること
片方だけではありません。

憲法25条に基づく目的

生活保護法の第1条から第4条は、それぞれ次のことを定めています。

条文 定めていること
第1条 憲法25条の理念に基づく目的(最低限度の生活の保障と自立の助長)
第2条 要件を満たす限り、無差別平等に受けられること
第3条 保障される生活は「健康で文化的な生活水準」を維持できるものであること
第4条 資産・能力その他あらゆるものを活用することが要件であること

この表で見落とされやすいのが第2条と第3条です。

  • 「無差別平等」は、要件を満たすなら誰であっても受けられるという意味です。年齢や性別、これまでの経緯によって扱いが変わるものではありません
  • 第3条は「最低限度」の中身を定めています。生きられればよいという水準ではなく、健康で文化的な生活水準を維持できることが求められています

解釈と運用はこの原理に縛られる

この4つが重要なのは、続く第5条で「この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない」と定められているからです。
制度を運用する側が従うべき原理として位置づけられており、個別の判断がここから離れることは法律上想定されていません。

03誰が受けられるのか|「あらゆるものを活用する」の中身

4つの活用を示す図解

生活保護法第4条は、保護の要件をこう定めています。

保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

「あらゆるもの」という言葉だけでは何をすればよいのか分かりません。
厚生労働省は、これを4つに分けて説明しています。

4つの活用(資産・能力・他制度・扶養)

活用するもの 厚生労働省の説明
資産 預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てる
能力 働くことが可能な方は、その能力に応じて働く
あらゆるもの 年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用する
扶養義務者の扶養 親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受ける

読み方のポイントは、「生活に利用されていない」土地・家屋という限定が付いている点です。
住んでいる家がそのまま対象になると書かれているわけではありません。

親族の援助は「優先」であって「条件」ではない

扶養について、第4条第2項はこう定めています。

民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

ここで使われているのは「優先」という言葉で、「条件」ではありません。
親族から実際に援助を受けられるなら、それが先に充てられるという意味です。
厚生労働省も「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と案内しています。

扶養義務者への照会が実際にどう運用されているかは、生活保護の受給条件 完全ガイドで整理しています。

急いでいるときの例外

第4条には第3項があります。

前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

資産の活用や扶養の優先は、急いでいる状況で保護を止める理由にはならない、という定めです。

04いくら支給されるのか|最低生活費と収入の差額

最低生活費と収入の差額を示す図解

金額の決まり方はシンプルです。
厚生労働省の説明では、収入と最低生活費を比較し、収入が足りない場合にその差額が支給されます。

金額の決まり方

基準を作るのは厚生労働大臣です。
生活保護法第8条は、その基準で測った必要額のうち、自分の収入や持ち物で満たせない不足分を補う範囲で保護を行うと定めています。

同じ条文の第2項では、その基準が年齢別・性別・世帯構成別・所在地域別などを考慮したものであり、最低限度の生活の需要を満たすに十分で、かつこれを超えないものでなければならないとされています。

つまり金額は一律ではありません。
同じ収入でも、ひとり暮らしか家族と住んでいるか、都市部か地方かで結果が変わります。
世帯別の具体的な金額は生活保護でもらえる金額で整理しています。

また第9条には「必要即応の原則」があり、年齢や健康状態など個人・世帯の実際の必要の違いを考慮して、有効かつ適切に行うと定められています。

世帯単位で判断される

知っておいていただきたいのが第10条です。

保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。
但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

判断されるのは個人ではなく世帯です。
同じ家に住んでいる家族全員の収入と最低生活費を合わせて見ることになります。
ただし、ただし書きにあるとおり、世帯単位では判断しにくい事情がある場合に個人を単位とする余地も残されています。

05何が支給されるのか|8つの扶助と、必要なものだけ受ける仕組み

8つの扶助を示す図解

生活保護というと現金の給付を思い浮かべますが、それだけではありません。
生活保護法第11条は、保護の種類を8つ挙げています。

8つの扶助の一覧

# 扶助の種類
1 生活扶助
2 教育扶助
3 住宅扶助
4 医療扶助
5 介護扶助
6 出産扶助
7 生業扶助
8 葬祭扶助

読み方のポイントは、住まいと医療が別の扶助として立っていることです。
それぞれがどの費用に対応するかは、各扶助の中身は生活保護の8つの扶助 まるわかりで詳しく整理しています。

単給と併給

第11条には第2項があります。

前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる。

「単給」は1つの扶助だけを受けること、「併給」は複数を組み合わせて受けることです。
8つすべてをまとめて受ける形だけが定められているわけではありません。

「医療費だけ何とかならないか」という相談を耳にしますが、法律上は必要に応じて扶助を組み合わせる仕組みになっています。
実際にどの扶助が適用されるかは、福祉事務所が個別に判断します。

06どこへ相談するのか

相談窓口を示す図解

厚生労働省は、相談・申請の窓口を「現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当」と案内しています。

福祉事務所は市区部では市区が、町村部では都道府県が設置しています。
福祉事務所を設置していない町村に住んでいる場合は、町村役場でも手続きができます。

つまり、いま自分が住んでいる場所を管轄している窓口が相談先です。
どの窓口に行けばよいか分からないときは、市区役所や町村役場に「生活保護の担当はどこか」と尋ねるところから始められます。

申請の具体的な進め方、持っていくもの、結果が出るまでの日数については、生活保護の申請 流れ・必要なもので整理しています。

07住まいはどうなるのか|不動産会社から見た実務

申請と住まい探しの順序を示す図解

ここからは、生活保護を利用される方の住まい探しを仲介している立場からお伝えします。

受給の決定前に部屋を決めようとすると止まりやすい

当社が対応した案件では、受給の決定や転居についての判断がまだ出ていないことが、住まい探しの前段階で手続きが止まる主な要因になっていました。

情報を集める段階でご相談いただくことに支障はありません。
一方で、契約まで進む段階になると、決まっていないことが多いまま動くと、あとでやり直しになります。

進めやすい順序は次の形です。

  1. まず福祉事務所への相談・申請を進める
  2. 並行して、住みたい地域や希望条件をおおまかに整理しておく
  3. 受給や転居についての判断が出てから、具体的な物件の話を進める

大家・管理会社への説明は誰がするのか

もうひとつ、誤解されやすい点があります。

大家さんや管理会社へ制度の仕組みを説明するのは、仲介する不動産会社の役割です。
当社の実務では、ケースワーカーが説明の仲介役を担う動線は基本的にありません。
関与があっても本人確認の連絡程度にとどまることが多くあります。

生活保護を利用していることを自分から大家さんに説明しなければならない、と身構える必要はありません。
そこは仲介会社が引き受ける部分です。

08利用を考えるとき、最初に確認する3つのこと

確認すべき3点を示す図解

最後に、実際に動くときの出発点を整理します。

1. いまの収入と、住んでいる地域

支給されるかどうかは、収入が最低生活費に足りているかで決まります。
最低生活費は世帯構成と住んでいる地域によって変わるため、この2つが分かれば話が早く進みます。

2. 同じ家に住んでいる人

判断は世帯単位で行われます。
同居している家族がいるかどうかで、見られる範囲が変わります。

3. 相談先の福祉事務所

窓口は、いま住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。
まずはそこで相談することから始まります。

この3つが整理できていれば、窓口での話が具体的になります。

住まいのことでお困りの場合は、申請の手続きと並行してご相談いただけます。
物件を決める前の段階からご相談いただくほうが、条件のずれによるやり直しを避けやすくなります。