01生活保護でもらえる金額は『最低生活費−収入』の差額です

最低生活費と収入を天秤にかけて差額が保護費になる仕組みのイメージ

「生活保護を受けたら、毎月いくら受け取れるのか」。
制度の利用を考えるとき、最初に知りたいのはこの一点ではないでしょうか。

答えの骨組みはシンプルです。
国が定める基準で計算した世帯の最低生活費から、年金や給料などの収入を差し引いた不足分が、保護費として毎月支給されます。
基準は生活保護法第8条に基づいて厚生労働大臣が定めており、福祉事務所が独自に決めているわけではありません。

つまり、受け取る金額は次の3つで決まります。

  • 世帯の構成(人数と年齢)
  • 住んでいる地域
  • 世帯の収入(年金・給料・手当など)

同じ生活保護でも、東京で暮らす一人暮らしの方と、地方で子どもを育てるひとり親世帯とでは、金額が大きく違います。
だからこそ「平均でいくら」という答えにはあまり意味がなく、自分の世帯に当てはめて確かめることが大切になります。

この記事では、厚生労働省が公表している基準額の実例だけを使って、世帯別の目安と計算のしくみを整理しました。

02世帯別早見表──厚生労働省公表の基準額例(令和8年4月1日現在)

単身・夫婦・子育て世帯など世帯構成ごとに異なる支給額のイメージ

まず、生活費部分(生活扶助)の基準額から見ていきます。
厚生労働省が生活保護の案内資料で公表している、世帯類型別の基準額の例です。

世帯構成 東京都区部等 地方郡部等
3人世帯(33歳・29歳・4歳) 165,360円 147,370円
高齢者単身世帯(68歳) 77,980円 68,950円
高齢者夫婦世帯(68歳・65歳) 123,460円 109,720円
母子世帯(30歳・4歳・2歳) 197,220円 176,300円

出典は厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」に掲載されている生活扶助基準額の例(令和8年4月1日現在)で、児童養育加算等を含む金額です。

早見表の読み方──3つのポイント

  • 表の金額は食費・光熱水費などの生活費部分(生活扶助)だけです。アパートの家賃は住宅扶助として別枠で上乗せされます
  • 3人世帯・母子世帯の金額には、児童養育加算などの上乗せ分が含まれています
  • 「東京都区部等」は基準が最も高い地域の例です。住む地域による違いは後半の級地のセクションで説明します

現役単身・子育て世帯を含む類型別の基準額

上の早見表にない世帯類型は、国の審議会資料(社会保障審議会生活保護基準部会・令和8年2月)に示されている類型別の基準額で確認できます。
現在適用中の令和7年度基準(令和7年10月〜令和8年9月)・基準が最も高い1級地-1の金額です。

世帯類型 生活費部分の基準額(月額)
若年単身世帯(50代) 77,240円
高齢単身世帯(65歳) 76,880円
高齢夫婦世帯(65歳夫婦) 121,900円
夫婦子1人世帯(30代夫婦・子3〜5歳) 153,400円
夫婦子2人世帯(40代夫婦・子は中学生と小学生) 181,760円
母子世帯・子1人(30代親・子は小学生) 122,700円
母子世帯・子2人(40代親・子は中学生と小学生) 156,260円

この表の金額は第1類・第2類と特例的な加算を合わせた生活費部分で、児童養育加算や母子加算は含まれていません
子育て世帯やひとり親世帯は、実際にはここへ加算が上乗せされます。
最初の早見表とは年齢設定や加算の扱いが異なるため、同じような世帯類型でも金額は完全には一致しません。

20〜40代の単身世帯はこの公表類型に含まれていないため、正確な額は住所地の福祉事務所での試算が確実です。
どの表もあくまで公表されている「例」であり、実際の支給額は世帯ごとの認定で決まる点は押さえておいてください。

03支給額の内訳──8種類の扶助のうち、毎月の柱は2つです

生活費・家賃・医療など生活の場面ごとに分かれた8つの扶助のイメージ

生活保護の給付は、生活保護法第11条で8種類の扶助に分かれています。
名前は堅いですが、「生活の場面ごとに財布が分かれている」とイメージすると分かりやすくなります。

  • 生活扶助:食費・被服費・光熱水費など日常の生活費
  • 住宅扶助:アパートなどの家賃
  • 教育扶助:義務教育の学用品費や給食費など
  • 医療扶助:病院・薬局の費用
  • 介護扶助:介護サービスの費用
  • 出産扶助・生業扶助・葬祭扶助:出産、就労技能の修得、葬祭といった場面ごとの費用

このうち、毎月の受取額の柱になるのは生活扶助と住宅扶助の2つです。

生活扶助は『個人分+世帯分』の合算です

生活扶助は、2つの部分を合算して計算されます。
年齢別に定められた食費などの個人単位の費用(第1類)と、光熱水費など世帯単位の費用(第2類)です。
世帯の人数や年齢構成で額が変わる設計になっており、早見表の世帯別の違いはここから生まれています。

家賃は別枠・医療費は窓口負担なし

住宅扶助は、家賃を地域ごとに定められた上限額の範囲内で実費支給するしくみです。
「家賃の分だけ生活費が削られる」わけではなく、生活扶助とは別枠で支払われます。
地域別の上限額の実例は、後半の級地のセクションで紹介します。

あわせて押さえておきたいのが医療扶助です。
医療費は福祉事務所から医療機関へ直接支払われるため、原則として本人の窓口負担はありません。
「支給された保護費の中から医療費を払う」という誤解を耳にしますが、病院代のために早見表の金額が目減りすることはない、と理解しておいてください。

04計算の流れ──公表事例を使って順にたどってみます

級地確認から差額計算まで6つのステップを順にたどる計算フローのイメージ

自分の世帯の金額を見積もる手順は、次の6ステップです。

  • ①住んでいる市区町村の級地(地域区分)を確認する
  • ②世帯全員分の第1類(年齢別の生活費)を合算する
  • ③世帯人数に応じた第2類(光熱水費など)を足す
  • ④該当する加算(子ども・障害など)を上乗せする──ここまでが生活扶助
  • ⑤家賃(住宅扶助の上限内の実費)を足す──世帯の最低生活費が出る
  • ⑥最低生活費から世帯の収入を差し引く──残りが毎月の保護費

高齢者夫婦世帯の仮例で計算してみます

言葉だけでは分かりにくいので、早見表の高齢者夫婦世帯(東京都区部等・123,460円)を使った仮の例で流れを見てみます。

仮に、東京23区内で家賃60,000円のアパートに夫婦で暮らすとします。
2人世帯の住宅扶助の上限額の例は64,000円(東京都区部・令和7年4月時点の公表事例)なので、この家賃は上限内に収まり、実費の60,000円が支給対象になります。

  • 生活扶助:123,460円
  • 住宅扶助:60,000円(実費)
  • 世帯の最低生活費:183,460円

この夫婦に月80,000円の年金収入がある場合、183,460円80,000円で、毎月の保護費は103,460円になります。
年金と保護費を合わせて、最低生活費の水準がちょうど確保されるかたちです。
医療や介護が必要になれば、その費用は別途カバーされます。

なお、この金額例はあくまで計算の流れをつかむための仮例です。
実際は年齢や世帯の事情によって加算や認定が変わるため、同じ条件でもこの通りの額になるとは限りません。

05加算──子育て・ひとり親・障害のある方は上乗せされます

子育て世帯やひとり親世帯、障害のある方への加算による上乗せのイメージ

生活扶助には、特別な事情のある世帯への上乗せ(加算)があります。
代表的なものは次の通りです。

  • 児童養育加算:子どもを育てている世帯
  • 母子加算:ひとり親世帯(父子世帯も対象)
  • 障害者加算:障害等級など一定の要件に該当する方
  • 妊産婦加算:妊娠中・産後の方
  • 冬季加算:10月から4月までのうち、地域に応じて5〜7ヶ月間、暖房費などの冬の生活費
  • 期末一時扶助:年末の特別な出費への上乗せ

早見表で母子世帯の金額が高齢者単身世帯より大きく上回っているのは、子ども2人分の生活費に加えて、こうした加算が含まれているためです。

金額の一例を挙げると、母子加算は子ども1人の場合で月18,800円です(令和7年4月基準・1級地-1・厚生労働省公表資料より)。
ひと月の家計にとって決して小さくない上乗せであることが分かります。

加算の額は、世帯の状況・地域・年度によって細かく変わります。
「自分の世帯はどの加算に当てはまるのか」「いくら上乗せされるのか」は、福祉事務所での試算のときに必ず確認したいポイントです。
特に障害者手帳をお持ちの方や妊娠中の方は、該当し得る事情を伝え漏らさないようにしてください。

06働いて収入があっても、いきなりゼロにはなりません

働いた収入の一部が勤労控除で手元に残る仕組みのイメージ

「働いたら生活保護は打ち切られる」というイメージを持つ方がいますが、制度の設計は違います。

収入がある場合は、最低生活費との差額が支給されます。
給料が最低生活費より少なければ、その不足分だけ保護費が出るしくみで、収入が増えた分に応じて保護費が調整される「差額支給」が基本です。

勤労控除──働いた分の一部は手元に残ります

働いて得た収入には、勤労控除というしくみがあります。
就労収入の一定額は「働くための必要経費」として収入の認定から除外されるため、働いた分がまるごと保護費の減額になるわけではありません。
結果として、働いたほうが手元に残るお金の合計は多くなる設計です。
控除額の計算は収入額によって変わるため、具体額は福祉事務所で試算してもらえます。

年金や手当も収入として認定されます

収入として認定されるのは給料だけではありません。

  • 年金(老齢年金・障害年金など)
  • 児童扶養手当などの各種手当
  • 親族からの仕送り

これらも最低生活費から差し引く対象になります。
逆に言えば、年金があっても年金額が最低生活費に届かなければ、差額分の生活保護を受けられるということです。

収入は正確に申告する義務があり、申告漏れは後からさかのぼって返還を求められる原因になります。
収入に変化があったときは、速やかに福祉事務所へ届け出るようにしてください。

07住む地域でいくら変わるのか──級地別の公表事例

都市部と郡部で基準額が異なる地域差のイメージ

生活保護の基準額は全国一律ではありません。
物価や生活水準の地域差を反映するため、全国の市区町村は「級地」と呼ばれる区分に分けられ、最も高い1級地-1(東京都区部など)から3級地-2まで、6段階の基準が設定されています。

高齢者単身世帯の級地別事例(令和7年4月時点)

地域でどれくらい変わるのか、厚生労働省が公表している高齢者単身世帯(68歳)の事例を見てみます。

級地区分 生活扶助 住宅扶助(上限額の例) 合計
1級地-1(東京都区部など) 77,980円 53,700円 131,680円
1級地-2 74,950円 41,000円 115,950円
2級地-1 73,090円 36,000円 109,090円
2級地-2 71,240円 35,000円 106,240円
3級地-1 70,770円 33,000円 103,770円
3級地-2 68,450円 32,000円 100,450円

出典は厚生労働省「生活保護制度の概要等について」の最低生活保障水準の具体的事例(令和7年4月)です。
住宅扶助の欄は、各級地の代表的な自治体における単身世帯の上限額の例を指します。
前半の早見表とは公表時点が異なるため、金額に小さな差があります。

最上位と最下位を比べると、合計で月3万円以上の差があります。
生活費部分の差よりも、家賃上限の差のほうが大きいことが分かります。

3人世帯(夫婦と子1人)の級地別事例

同じ資料には、3人世帯(33歳・29歳・4歳)の事例も掲載されています。

級地区分 生活扶助 住宅扶助(上限額の例) 合計
1級地-1(東京都区部など) 164,860円 69,800円 234,660円
1級地-2 160,400円 53,000円 213,400円
2級地-1 156,250円 47,000円 203,250円
2級地-2 152,090円 46,000円 198,090円
3級地-1 151,050円 43,000円 194,050円
3級地-2 145,870円 42,000円 187,870円

子育て世帯では、都市部と地方の差が月4万円を超えます。
「どこに住むか」は、生活保護の家計にとってそれだけ大きな変数だということです。

同じ級地でも自治体差があります

2点補足します。
住宅扶助の上限額は同じ級地でも自治体によって異なる場合があるため、表の額はあくまで代表例です。
また、家賃上限のしくみや市区町村ごとの具体額は、それだけで1本の記事になる大きなテーマなので、本記事では金額の全体像に絞っています。

自分の自治体の上限額は、担当のケースワーカーまたは福祉事務所の窓口でご確認ください。

08自分の正確な金額を知るための行動手順

福祉事務所の窓口相談に向けて書類を整理するイメージ

ここまでの目安を踏まえて、実際の金額を確かめる手順をまとめます。

最初の一歩は、住所地の福祉事務所への相談です。
生活保護の申請前でも、窓口で世帯の状況を伝えれば最低生活費の試算をしてもらえます。
相談しただけで申請の義務が生じることはありません。

福祉事務所に持っていく情報リスト

窓口で正確な試算をしてもらうために、次の情報を整理して持っていくとスムーズです。

  • 世帯全員の年齢と続柄
  • 現在の家賃が分かるもの(賃貸借契約書や更新通知など)
  • 収入が分かるもの(給与明細・年金振込通知書・手当の通知など)
  • 障害者手帳や母子健康手帳など、加算に関わるもの
  • 預貯金のおおよその額

なお、「そもそも自分は生活保護を受けられるのか」という受給の入り口については、資産や扶養の考え方も含めて生活保護の受給条件 完全ガイドで詳しく整理しています。
金額の前に条件面が気になる方は、そちらから読むことをおすすめします。

基準額は毎年10月に見直されます

もうひとつ、金額を調べるうえで知っておきたいのが基準額の鮮度です。
生活保護の基準額は毎年10月に見直されるため、この記事の早見表の数字も固定ではありません。

国の審議会資料では、令和8年10月から特例的な加算を1人あたり月1,000円引き上げる案(月1,500円から月2,500円へ)が示されています(令和8年2月時点の案)。
実際に適用される最新の基準額は、相談する時点で福祉事務所に確認するのが最も確実です。