01生活保護の申請は「いま住んでいる地域の福祉事務所」へ|書類が揃っていなくても申請できます

申請窓口へ向かう道のりを示す図解

生活保護を申請したいと思ったとき、最初に迷うのは「どこへ行けばいいのか」ではないでしょうか。

答えははっきりしています。
厚生労働省は、相談・申請の窓口を「現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当」と案内しています。

もうひとつ、申請をためらう理由になりやすいのが持ち物です。
厚生労働省は「必要な書類が揃っていなくても申請はできます」と明記しています。
書類を集めてからでないと窓口に行けない、ということはありません。

この記事では、次のことを法令と公表資料の記載に沿って確認していきます。

  • 申請の窓口と、町村に住んでいる場合の行き先
  • 申請書に書く事項と、持っていくとよいもの
  • 申請後に行われる調査と、結果が出るまでの日数
  • 住まいや持ち家、家族のことで「自分は対象外かも」と考えている場合の扱い

受給の要件そのもの(資産・収入・扶養・稼働能力の考え方)は生活保護の受給条件 完全ガイドで、支給額の計算は生活保護でもらえる金額で整理しています。
この記事は手続きの進め方に絞ってお伝えします。

02申請の窓口はどこか|市区に住んでいる場合と、町村に住んでいる場合

市区と町村で窓口が分かれることを示す図解

窓口は住んでいる場所によって少し変わります。
厚生労働省の案内では、福祉事務所は市区部では市区が、町村部では都道府県が設置しているとされています。

住んでいる場所 行き先
市・特別区 その市・区が設置する福祉事務所の生活保護担当
町村(福祉事務所あり) その地域を所管する福祉事務所
町村(福祉事務所なし) 町村役場でも申請の手続ができる

読み方のポイントは次の2つです。

  • 町村役場で受け取られた申請は、実施機関へ送られます。生活保護法は、その期限を5日以内と定めています
  • 生活保護法施行規則では、申請は「居住地又は現在地の保護の実施機関に対して行う」とされています。住民票の住所と今いる場所が違っていても、いま自分がいる場所の福祉事務所で申請できます

事前の相談で何が行われるか

窓口ではまず相談から始まることが一般的です。
厚生労働省は、事前の相談について「生活保護制度の説明をさせていただくとともに、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討します」と説明しています。

つまり相談の場では、生活保護以外の制度が使えないかも一緒に検討されます。
ここで大切なのは、相談と申請は別の手続きだということです。

申請する意思がある場合は、そのことをはっきり伝えてください。
生活保護法施行規則には、申請する意思を表明しているときは、実施機関は申請が速やかに行われるよう必要な援助を行わなければならないと定められています。

03申請できるのは誰か|本人以外の家族が申請することもできます

本人と家族が申請できることを示す図解

「親の生活保護を子どもが申請できるのか」「体調が悪くて窓口まで行けない」といったご相談があります。

生活保護法第7条は、保護は「要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始する」と定めています。
つまり申請できるのは次の3者です。

  • 本人(保護を必要としている方)
  • その扶養義務者
  • その他の同居の親族

本人が窓口に行けない状態でも、扶養義務者や同居の親族であれば申請できるということです。

本人が動けない状態のとき

同じ第7条には、ただし書きがあります。
要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができるという規定です。

本人が置かれている状況によっては、申請という手続きを待たずに保護が行われる余地が法律上あるということです。
どのような場合が該当するかは窓口の判断になります。

04申請に持っていくもの|申請書に書く5つの事項と、揃わないときの扱い

申請書と持ち物を示す図解

生活保護法第24条第1項は、申請書に記載する事項を5つ挙げています。

# 申請書に記載する事項
1 要保護者の氏名及び住所又は居所
2 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名・住所又は居所と、要保護者との関係
3 保護を受けようとする理由
4 要保護者の資産及び収入の状況
5 その他、保護の要否等を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

読み方のポイントは、ここに挙がっているのは「申請書に書くこと」であって、持参すべき書類の一覧ではないという点です。

厚生労働省は、申請時の調査において「世帯の収入・資産等の状況がわかる資料(通帳の写しや給与明細等)を提出していただくことがあります」と案内しています。
手元にあるものは持っていくと、その後の手続きが進みやすくなります。

書類が揃わないときはどうなるか

ここが最も誤解されやすいところです。
生活保護法第24条第1項には「申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない」というただし書きがあります。
添付書類についても、第2項に同じ趣旨のただし書きが置かれています。

国の案内でも「必要な書類が揃っていなくても申請はできます」と明記されています。

身分証明書が手元にない、通帳をなくした、給与明細が出ない。
そうした状況でも、申請という行為そのものは妨げられないということです。

自治体によって運用が違う部分

そのうえで、実務としてお伝えしておきたいことがあります。
当社が生活保護を利用される方の住まい探しでやり取りをしてきた範囲では、必要書類や見積の取り方の運用は自治体によって異なることが確認されています。

どの書類を求められるかは、窓口によって幅があります。
窓口で案内された内容がこの記事の説明と違っていても、それは誤りとは限りません。
案内に従いつつ、書類が揃わないことを理由に申請そのものを先延ばしにしない、という順序で考えていただければと思います。

05申請したあとの流れ|5つの調査と、結果が出るまでの日数

申請から決定までの日数を示す図解

申請書を出したあと、何をされるのかが分からないという不安は大きいと思います。
厚生労働省は、申請後に行われる調査として次の5つを挙げています。

  • 生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
  • 預貯金、保険、不動産等の資産調査
  • 扶養義務者による扶養(仕送り援助等)の可否の調査
  • 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
  • 就労の可能性の調査

家庭訪問が含まれている点は、事前に知っておくと心の準備ができます。

14日以内・最長30日という期限

結果がいつ出るのかは、法律で期限が決められています。

内容 定め
原則 申請のあった日から14日以内に書面で通知
延長できる場合 扶養義務者の資産・収入の調査に日時を要する場合など特別な理由があるとき
延長の上限 30日まで

生活保護法第24条第3項は、実施機関は保護の要否・種類・程度・方法を決定し、申請者に書面で通知しなければならないと定めています。
第4項では、その書面に決定の理由を付さなければならないとされています。

延長された場合も、第6項により、通知の書面にその理由を明示しなければならないことになっています。
「なぜ遅れたのか」は書面に書かれるということです。

30日を過ぎても通知が来ないとき

知っておいていただきたい規定が、生活保護法第24条第7項にあります。

申請から30日が過ぎても通知が来ないとき、申請者はその申請が却下されたものとみなすことができます。

これは、結果が出ないまま待たされ続ける状態を避けるための規定です。
まずは窓口へ状況を確認していただくのが先ですが、法律上こうした定めがあることは知っておいて損はありません。

なお、保護費そのものは、厚生労働省の説明では最低生活費から収入を引いた額が毎月支給されます。
金額の計算方法は生活保護でもらえる金額で詳しく整理しています。

06「自分は対象外かもしれない」という4つの誤解

誤解が解ける様子を示す図解

申請をためらう理由として、実際にはそうでないことを条件だと思い込んでいるケースがあります。

結論から言えば、次の4つはいずれも「申請できない理由」にはなりません。

  • 住むところがない
  • 持ち家がある
  • 自動車を持っている
  • 家族に知らせたくない

厚生労働省が「生活保護を申請したい方へ」で示している内容を確認します。

住むところがない場合

「住所がないと申請できない」という誤解を耳にしますが、厚生労働省は「住むところがない人でも申請できます」と案内しています。
まずは現在いる場所の近くの福祉事務所へ相談するよう示されています。

同じ案内には「施設に入ることに同意することが申請の条件ということはありません」とも書かれています。
施設への入所を前提としなければ申請できない、ということではありません。

持ち家・自動車がある場合

持ち家についても「持ち家がある人でも申請できます」と案内されています。
利用しうる資産を活用することは保護の要件であるとしたうえで、居住用の持ち家については保有が認められる場合があると説明されています。

自動車は扱いが異なります。
処分するのが原則としたうえで、通勤用の自動車を持ちながら求職している場合に、処分しないまま保護を受けることができる場合があるとされています。

資産 厚生労働省の案内
居住用の持ち家 保有が認められる場合がある
自動車 処分が原則。通勤用を持ちながら求職している場合に認められることがある

いずれも「必ず認められる」ではなく「場合がある」という書き方である点は、正確に受け取っていただければと思います。

家族に知られたくない場合

扶養照会を心配される方は多くいらっしゃいます。
案内では「扶養義務者の扶養は保護に優先しますが、例えば、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と案内しています。

親族に話を通してからでなければ申請できない、という前提ではないということです。
扶養照会そのものの運用は生活保護の受給条件 完全ガイドで扱っています。

07申請と部屋探しはどちらが先か|不動産会社から見た実務の順序

申請と部屋探しの順序を示す図解

ここからは、生活保護を利用される方の住まい探しを仲介している立場からお伝えします。

ご相談で多い「許可の前でも探せますか」

当社への相談で頻出しているのが、「生活保護の受給前や、ケースワーカーの許可が出る前でも部屋を探せるか」というご質問です。

ご相談自体は、申請の結果が出る前の段階からお受けしています。
一方で、契約まで進む段階になると話が変わってきます。
当社が対応した案件では、受給の決定や転居についての判断がまだ出ていないことが、物件探しの前段階で手続きが止まる主な要因になっていました。

実務で止まりやすいところ

実務上、住まい探しが止まりやすいのは物件の提案そのものよりも、その前後の工程でした。
具体的には次のような場面です。

  • 生活保護の受給がまだ決まっていない段階で物件を決めようとしている
  • 転居が必要という判断がまだ出ていない
  • 希望条件が、住宅扶助の範囲や実際の物件の出方と合っていない
  • 申込後の審査で結果が出ず、提案をやり直すことになる

どれか1つが最大の原因と言えるほどのデータは取っていませんが、前段階と申込後に集中しているという傾向はあります。

そこで、順序としては次の形が進めやすくなります。

  1. まず申請の相談・手続きを進める
  2. 並行して、住みたい地域や希望条件をおおまかに整理しておく
  3. 受給や転居についての判断が出てから、具体的な物件の話を進める

物件を先に決めてしまうと、条件が合わずにやり直しになることがあります。
だからこそ、申請の手続きと情報集めを並行させ、契約に向けた動きは判断が出てからにする、という進め方をおすすめしています。

08申請当日までにやることと、結果が届いたあとの動き方

チェックリストと封書を示す図解

最後に、実際に動くための手順を整理します。

申請までの持ち物チェックリスト

揃っているものを持っていきましょう。
書類が揃っていない場合の扱いは、前のセクションのとおりです。
ただし、申請後の調査で資料の提出を求められることはあります。

厚生労働省が申請時の調査で提出を求められることがあるとしているのは、世帯の収入・資産等の状況がわかる資料です。
具体例として通帳の写しや給与明細等が挙げられています。

  • 預金通帳の写し(あれば)
  • 給与明細など収入がわかるもの(あれば)

これ以外に何を求められるかは窓口によって異なります。
当社の実務でも、必要書類の運用は自治体によって差があることが確認されています。
案内された書類が用意できない場合でも、申請そのものは書類が揃っていなくてもできると厚生労働省が明記しています。

窓口で聞かれるのは、生活保護法第24条第1項に挙げられている事項が中心です。
特に「保護を受けようとする理由」は、いまの生活状況を自分の言葉で説明することになります。
話す内容を事前に少し整理しておくと落ち着いて話せます。

決定通知が届いたら確認すること

決定は書面で通知されます。
届いたら次の3点を確認してください。

  1. 保護を開始するのか、しないのか
  2. 決定の理由(生活保護法第24条第4項により、書面には決定の理由を付さなければならないとされています)
  3. 申請日からの日数(14日を超えている場合、延長の理由が書面に明示されているか)

開始とならなかった場合も、書面には理由が書かれています。
どの点が判断の分かれ目になったのかを確認することが、次の行動を考える出発点になります。

住まいのことでお困りの場合は、申請の手続きと並行してご相談いただけます。
物件を決める前の段階からご相談いただくほうが、条件のずれによるやり直しを避けやすくなります。